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1.遺留分とは

 民法では、被相続人がする相続財産の完全な自由処分を許さず、一定の親族のために留保すべき財産の一定割合を「遺留分」として定めています。
 

2.遺留分権利者

 遺留分権利者は法定相続人のうち、兄弟姉妹を除いた他のすべての相続人です。その遺留分の割合は、相続人となる者の構成によって異なっています。(民1028条)


一  直系尊属のみが相続人である場合  被相続人の財産の三分の一
二  前号に掲げる場合以外の場合     被相続人の財産の二分の一
 

3.遺留分算定の基礎となる財産

 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定します。(民1029条)
 これは、被相続人が前もって自分の財産を他人に、あるいは特定の相続人に贈与して、遺留分の実効性を妨げることのないようにするためです。


 ※遺留分算定の基礎となる財産に加算すべき贈与は次のものです。

一 相続開始前1年以内にされた贈与(民1030条前段)。
二 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った贈与(経過年数を問いません。)(民1030条後段)。
三 相続人が被相続人から婚姻または養子縁組のため、もしくは生計の資本として受けた贈与、すなわち、民903条規定の特別受益分(民1044条)。
四 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした場合には、贈与とみなされます。(1039条)
 

4.遺留分の減殺

 被相続人が遺留分を侵害する財産の処分行為を行った場合であっても、その行為は無効とされません。それに代えて、そのような場合には遺留分権利者がその行為によって侵害された遺留分の保全行為を行うことができるとしています。

したがって、遺留分を侵害する遺言があった場合には遺言は無効とされないため、遺留分権利者がもつ権利を実現するためには、権利者自ら(または承継人)が権利を保全する行為を行わなければなりません。この保全行為により、遺留分を侵害する遺贈や贈与は、遺留分を保全するために必要な限度で、その効力が失われます。この保全行為を「遺留分の減殺」といいます(民1031条)。


減殺請求権の行使は遺留分権利者の受遺者や受贈者に対する減殺の意思表示によって行われる相手ある単独行為とされ、減殺の意思表示がなされると、減殺請求権は、すでに履行された遺贈・贈与に対しては、物権的請求権または不当利得返還請求権、未履行のものについては履行を拒絶する権利となります。


※1遺留分減殺請求権の消滅
減殺請求権を行使するか否かは遺留分権利者の自由意思にゆだねられますが、一定期間内に行使しないと、その権利は消滅します。すなわち、遺留分権利者が自己のための相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年の消滅時効、相続開始の時から10年の除斥期間によって、減殺請求権は消滅します。(民1042条)。


※2減殺請求の順序
減殺請求の順序は取引の安全の配慮からまず遺贈を先にし、遺贈で足りないときにはじめて贈与におよぶものとされます。贈与も新しいものから順次古いものへと行うこととされています(民1033条1035条)。
ただし、減殺を受けるべき受贈者が無資力の場合には、その損失は遺留分権利者の負担とされます。(民1037条)。
 

5.遺留分の放棄

相続人は、相続開始の前に家庭裁判所の許可を得て、遺留分を放棄することができます(民1043条)。家庭裁判所が遺留分の放棄を許可する基準は次のような点です。


1、放棄が本人の自由意思にもとづくものであること
2、放棄の理由に合理性と必要性があること
3、代償性があること(特別受益分があるとか、放棄と引きかえに現金をもらう、など)

被相続人が遺留分放棄を強要したとみられる場合や、一方的に不利益を被る場合には認められません。

相続開始後の遺留分の放棄は、遺留分権利者の意思で自由に行うことが出来ます。なお、共同相続人の1人がした遺留分の放棄は、他の共同相続人の遺留分に影響をおよぼしません。