公正証書は、公証役場で公証人(法務大臣が、一定の試験に合格した者および判事、検事、弁護士などから任命した公務員。)に作成してもらう公文書です。
□メリット
・公証人という専門家が作成するので、内容に疑義が無く確実です。
・公証役場という公的機関が原本を保管するので改変される怖れがありません。
・公正証書が保存される期間は原則20年間ですが、保存期間の満了した後でも
特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存されます。
・相続開始時に家庭裁判所の「検認」を受ける必要がありません。
□デメリット
・費用がかかります。
・証人2名の立会いが必要です。四親等内の親族は証人になることができません。
・必要書類を集め、証人を同伴して公証役場へ行かなければなりません。
・遺言の内容が他人に知られてしまいます。(※公証人には「守秘義務」があります。)
●そのわけは
1.熟年夫婦は、
遺言を残さずに亡くなられたときには、法定相続人が故人の財産を相続することになります。
配偶者以外の相続人(子、直系尊属、兄弟姉妹)の態様により相続分が異なりますが、
葬儀後、相続人全員の分割協議まで手続きを行うという、大仕事をこなさなければなりません。
2.事実婚カップル(婚姻届を出していないカップル)は、
「法的」に婚姻していない事実婚カップルの場合は、お互いに「相続権」がありません。
遺言が残されなかった場合は民法に従って遺産分割することになりますが、法律上の配偶者でない者には遺産は一銭も渡されません。
自分にもしもの時にパートナーに財産を残すためには、婚姻届を出すか、相続財産を遺贈する旨の遺言を残さなければなりません。
3.そこで提案します
次の2点を内容とする遺言公正証書を作りましょう。
1)パートナーに自己の全財産を相続させる。
(事実婚カップルの場合は、全財産を遺贈する。)
2)遺言執行者として、パートナーを指定する。
●この遺言を残すことにより、相続開始後に次の効果が生じます。
1)遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民1012条)
2)遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。(民1013条)
要するに、遺言執行者として遺言執行を行うことにより
他人の同意を要することなく
相続財産のすべてを
相続することが出来ます。
(補足)
1.子と直系尊属には遺留分がありますが、この権利は権利者が遺留分請求を行って始めて具現化する権利です。遺言公正証書を作ることによって、家族は相続財産の処分方針を知ることになりますから、その時になって亡くなった子についての相続遺留分を望む親はいないと思いますし、子は将来自分が相続することを知っていますから、遺留分が問題となることはないと思います。
2.遺言を2人以上の者が同一の証書ですることは禁止されています(民975条)。
おのおの1通ずつ作成することになります。
1.「遺言の内容を書き出し、確認します」
遺言の内容は、
1)相続財産のすべてをパートナーに相続させる。(または遺贈する。)
2)遺言執行者としてパートナーを指定する。
の2点です。
承継人が1人なので、法律上の相続財産の表記は、「一切の財産」で足りますが、
確認のため、主たる物を書き出しましょう。
・不動産
・預貯金・金融資産(金融機関名や口座番号、金額)
・生命保険など
2. 「公証役場へ連絡します」
公証人には、執務を行う地域についての管轄がありますが、公正証書作成を依頼する人は、
どの公証役場へ行っても良いことになっています。
住所地や勤務先近くの公証役場を探して、電話で遺言作成について問い合わせします。
ファックスが利用できれば、電話でかなりのところまで煮詰めることが出来ます。
遺言の中での相続財産の表記を「一切の財産」とするか個別に記載するかを公証人と相談して決めます。個別に記載する場合は、末尾に「その他一切の財産」を書き加えます。
3. 「必要書類を用意します」
公証人により指示される書類を用意します。
・印鑑証明書
・住民票
・固定資産評価証明書
・不動産登記簿謄本
・保険証券のコピー
・預金通帳のコピー
など
4.「立会人を決める」
立会人として証人2人が必要です。公証役場で紹介してもらう事ができます。
5.「遺言公正証書完成」
公証役場を訪問し、遺言公正証書作成手続きを完了します。
打合せにより公証人が作成した公正証書を、遺言者と証人の前で公証人が全文読み上げます。
内容に問題が無ければ、遺言者と証人、公証人が署名・押印し、完成します。